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酸っぱいコーヒーを追い求めて

· 酸っぱい

「ともちゃん、ト・マ・ト」独特の抑揚がある歌のようなことば。 

喜ぶ我が子に面白くなったのか、私の両親は物心つくかつかないかの私に毎日トマトを食べさせていたようだ。  

そのせいか、私は昨今のフルーツトマトだの、甘いことが良いことのようなスーパーマーケットのトマト売り場に断固反対している。 

スーパーマーケットで売られている物でいうと、ドレッシングやポン酢を10年以上買っていない。理由は単純。甘すぎるからだ。自分好みに手作りしている。  

そんな私が酸っぱいコーヒーに目覚めたのは、2015年、アメリカオレゴン州ポートランドとあるカフェでの衝撃の出会いであったと鮮明に覚えている。カフェの名前は「ハートロースターズ」朝、開店を待って朝食をとろうとロースターズに向かった私が注文したのはコーヒーとカスクート。一口食べてコーヒーを飲んだ私は、地団駄を踏んで悔しがった。(かのような心持ち)『どうして今までこの味を知らなかったのか?!生まれてこの方飲んだことがない酸っぱいコーヒーだったのだ。そしてコーヒーの酸味とカスクートのチーズが絶妙に響きあっている。ワインショップ<エノテカ>のスタッフさんなら、これをマリアージュと言うのだろう。  

私はこれまでなんと不用意にコーヒーを飲んできたのだろう。本当に悔やまれる。 

味だけでなく、このハートロースターズは、Zenを体現したかのような研ぎ澄まされた美しい空間カスクートは薄く白い紙と水引で整えられてサーブされた  

振り返ってコーヒー遍歴を思い起せば、私は亡き父の影響を受け、濃いコーヒーにクリームを入れて飲むことを長年良しとしてきた。父は日曜日の朝、サイフォンで丁寧に抽出したコーヒーを私たち家族に提供した。ネルのドリッパーが洗って吊るされているのが日曜日午後のキッチン窓辺であった。美味しいかと執拗に聞かれるのにはうんざりだったが、確かにおいしかった。  

私がクリーム断ちをし、コーヒーをブラックで味わうようになったのは、体質改善に挑むタイミングであった。       

体質改善というのは、疲れやすく、頭痛持ちという、私の長年の悩みを解消すべく行ったものだ。かつての私は、ちょっと買い物に行って帰ってきては横になりたくなり、出張の翌日はたいてい寝込んでいた。頭痛薬を何度飲んでも痛みが収まらず病院の夜間休日救急窓口を受診し、鎮痛剤の座薬を処方してもらったこともある。  

野菜をたくさん食し、コーヒークリームも時には豆乳するなど、食には気をつかっているつもりの私だったが、聖蹟桜ケ丘の整体師との出会いによって変化を経験することになる。彼に「食べないものリスト」を教えてもらい、これが私の体質には合っていた  

牛乳、バナナ、大豆(発酵しているものはOK)  

誰にでも当てはまるわけでなはなく、これらは血管を広げる作用を持っていて、(そういうと良いように聞こえるが)私には血流がカスッ、カスっとなり、疲労感や頭痛につがなるのだそう。これまでの内科受診、整形外科でのレントゲンではなんともならなかった私の頭痛は意外にもあっけなく改善されたのだ。  

さてコーヒーの話に戻ろう。体質改善をしていなかったら、濃いコーヒーにクリームを入れ続けていただろうから、ハートロースターズでの衝撃もなかったかもしれない。そう思うと連続して起きた2つの出会いが奇跡のようにも思えてくる。  

ポートランドから日本に帰ってからも、ずっと私の頭の右端にあの衝撃の酸っぱいコーヒーがあった。人並みのちょっと下程度に疲れにくい身体を手にいれた私は、折りしもブームが始まりかけていたサードウエーブコーヒー、スペシャリティコーヒーを提供する店舗をまわって、同じ味を追い求めていた。 

しかしながら当時、これだ!というものには出会えなかった。猿田彦珈琲の恵比寿ブレンドは近いかもしれないと思った。都内の数店舗で残念だったのは、紙コップでの提供だ。紙の味がしてしまう。  

そして新型コロナウイルスによるパンデミック。リモートワークが多くなった私は、自分で淹れるコーヒーの不味さに辟易して、あの理想のハートロースターズのコーヒーを自分の手で再現しようと、トライする決意に至った。  

豆の産地、種類、焙煎、豆の量、お湯の温度、器具、カップ…様々な要素の複合で味は決まる。    

このあたりのことは、現在、多くのバリスタやコーヒーの専門家が発信している。トライして好みの味を見つけるには、ともかくやってみるしかない。  

ハンドドリップ、フレンチプレス、ネスプレッソ。すべて試してみた。ネスプレッソのパンフレットで教えられたのは、コーヒーの”酸っぱい”には大まかにいって3つあるということだった。「花のような」「柑橘のような」「ベリーや赤ワインような」。酸っぱいコーヒーという言い方より、このようなことばを使うほうが、なんだか教養があるように聞こえる。(酸っぱいコーヒーが好きというと、心無い人から酢を入れろと言われたりする)  

柑橘のような酸味を感じるコーヒーであれば、オレンジピールのチョコレートが合うだろう。私は赤ワインが好きなくせにアルコールに弱く、たぶんベリーや赤ワインのような酸味が一番好きなようだ。たぶん、というのは、これらは非常に繊細なもので、混じりあっていることもあるので、はっきりとはまだ言えない。豆の産地でいうと、ルワンダ、エチオピア、コロンビア、コスタリカなど。  

かなり近づいてきたことは確かだ。  

ポートランドで衝撃を受けたカスクートのチーズはチェダーチーズだと思われるが、こちらも種類が色々とありすぎて追求には限りがない。(フランスのカスクートはブリーが使わることもあるようだ)  

ハートロースターズのことを大げさに書き過ぎだと思われたかもしれない。 

しかしながら、このカフェはバズ・フィードUSで、死ぬ前に行きたいNo.1コーヒーショップに選ばれているのだそうだ。そこでは、ほのかに花の香りとベリーの複雑な味わいは他のロースターではなかなか出会えないテイストと評されている。  

私ももちろん、死ぬ前に行きたい!!  (松本 朋子)

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