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ソウルフード 北埼玉フライ

· ソウルフード

私は、埼玉県北部の熊谷市生まれである。 熊谷市を含む近隣エリア、行田市、鴻巣市のソウルフードといえば『フライ』。 

フライと言っても、いわゆる世間一般的な揚げ物の海老フライ・牡蠣フライ・鯵フライといったパン粉を付けて油で揚げたものとは、全く違う。 

現在も、熊谷市をはじめとした近隣エリアでは、フライ屋というお店が存在する。地元では当たり前に、「どこどこのフライ屋さんが好きだな」と会話をしている。 

そのフライ屋は、大概がフライと焼きそばの二つを提供する。 

では、その『フライ』の説明に入ります。 

ズバリ、フライは“焼き物”です。 

先程述べましたが、揚げ物ではなく、熱い鉄板の上で作る焼き物です。 

材料は、小麦粉・長葱・豚肉・青のり・かつお節。 

作り方は、小麦粉を水で溶き、それを鉄板の中央に20cmの大きさで円を作る。その上に、豚肉のバラ肉or小間切れと刻んだ長葱をパラパラとのせる。 

良きところでひっくり返し、またひっくり返す。 

こんがり熱が通ったところで、味付け。ウスターソースをかけ、生地に染み込ませ出来上がり。 

お好みで食べる時に、青のり・かつお節をかけていただく。お店によっては、紅しょうがが皿に添えてある。現在、フライ1枚の値段は、300円〜400円。 

この出来上がりをハフハフしながら食べるのが、まことにたまらないのです。 

元々、フライは農家で手軽に作るおやつだったという。簡単に作れて、安くて、腹持ちが良いこともあり、昭和初期に全盛期を迎えた行田の足袋工場で働く女工さんが食べたということで定着したそうです。 

そういう歴史を経て、今に至ったフライ。 

私のフライ初体験は、10歳の時、近所の駄菓子屋さんで。駄菓子屋の店舗の一角に、フライを焼く鉄板があって、「フライください!」と言うと、おばちゃんが熱々の鉄板に10cm大のフライを焼いてくれる。 

薄く溶いた小麦粉を鉄板に落とし、まぁるく広げる。その上に、豚肉も刻みネギものせず、その代わりに細い裂きイカのようなものをほんの気持ちだけパラパラ、かつお節を少しパラパラかけて、ウスターソースをかけて出来上がり「はい、出来たよ!」と受け取る。 

駄菓子屋なので、値段(1964年当時)は、10円。 

小学4年の私の1日の小遣いは10円。10円玉を握りしめ、駄菓子屋に通った。 

フライは、おばちゃんが慣れた手つきで3分ほどで焼きあげて、紙に挟んで手渡ししてくれる。熱々の出来上がりを受け取り、店の前でかぶりつき「うめぇ~」。今から思うと、粗末な食べ物なのに、当時の少年にとっては10円のご馳走だった。 

私の偏愛フライのスタートである。 

駄菓子屋には12歳まで通い、秋から寒い季節に多く食べた。そして、いつの間にか、その駄菓子屋さんは店を閉じてしまった。 

その頃は、小学生なので友だちと遊ぶ行動範囲も狭く、街にフライ屋のお店があることを知らなかった。 

親が「フライ屋さんに食べに行こう!」ということもなく、ほんのたまに親がフライを買ってきてくれた記憶がある。 

高校生、大学生になるに連れ、自分でラーメン屋さんや立ち食いそば屋さんに行くことが当たり前になり、いつしかフライを食べる機会は減った。 

フライへの郷愁がつのったのは、熊谷から東京に出てからだ。 

東京には、お好み焼き、もんじゃ焼きがあり、そして、広島のお好み焼きに出会った。この衝撃は忘れられない。なんせ、お好み焼きに焼きそばか入っていて、まるでお好み焼き版の豪華なデコレーションケーキだ。食べてみたら、凄く美味しい。広島の人はスゴいなと思ったものだ。 

そこで思い出したのが、「そういえば、故郷には、フライがあったなぁ〜」と。すると、無性に食べたくなった。 

丁度、熊谷に帰る機会があり、ワクワクしてフライ屋に向かった。早速、懐かしのフライを食べる。何ともウマイ。「東京や大阪のお好み焼きや、広島焼きには到底かなわないが、間違いなく俺の土台を作ったローカルフード、フライだ!この味、この味!」。シンプルで、何処にも派手さがない、飾りつけてない、むき出しの味。 

溶いた小麦粉に刻みネギ、豚肉(多分 小間切れ)、その上にソースと青のり、かつお節。改めて、うまいなぁ〜。あえて、美化して言うなら、粗末な埼玉県北のソース味クレープだ! 

この旨さは何なのか!?考えてみた。すぐ答えは出た。「ラードだ!」「ラードの脂だ!」「ラードはすごい!」 

とんカツもコロッケもラードで揚げるのだ。 

お肉屋さんの揚げたてのコロッケが美味しいのは、ラードの魔法だ。 

それが、私にとって魔法のフライとなる。 

フライは、まさに自分自身。故郷埼玉を出て、社会として東京で仕事に打ち込む自分。東京には、いろんなライバル達がいる。お好み焼き、広島焼き、韓国チヂミ、イタリアンのピザ、フランスのそば粉のガレット達。 

今も東京で、北埼玉出身の私はフライとして、ライバルに揉まれて、切磋琢磨生きている。 

(鶴間 政行

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